基礎知識
2.基準座標系

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本章では宇宙機の位置を確定するための重要な要素である「基準座標系」と「元期(エポック)」について解説します。

前章では軌道とは何かを定義するために、軌道の形状や軌道面の傾き、軌道上の位置などを定めるケプラリアン軌道要素について説明しました。では、定められた軌道要素は何を中心としていて、何を基準に面の傾きなどを知るのでしょうか。そしてその基準はいつ定められたものでしょう。

例えば、A君とBさんが待ち合わせをしています。場所はあるビルの2階エレベータ前に7時と決めました。この時、2階エレベータ前でも隣のビルで待っていた場合あるいは7時でも朝と夜を間違えていた場合にA君とBさんは出会えるでしょうか。この場合の「2階エレベータ前」というのが軌道要素で「あるビル」というのが基準座標系、「7時」というのがエポックとなるのです。位置情報を把握するうえでどちらも欠かせないものであることが分かりましたね。では、具体例を使い解説します。

地心慣性座標系

・基準面:平均赤道面
・X軸:春分点方向
・Z軸:基準面法線方向(北向き)
・Y軸:デカルト座標系の定義に従い、基準面X軸から90度の方向

地球中心慣性座標系(ECI系)は地球周回衛星を取り扱う上で最もよく使用される座標系です。さらに、ECI系のエポックを2000年1月1日11:58:56 GMT (Greenwich Mean Time)とした場合のJ2000座標系は組織をまたぎ最もよく使われる座標系の一つです。

地心地球固定座標系

・基準面:平均赤道面
・X軸:本子午線固定(経度0度)
・Z軸:基準面法線方向(北向き)
・Y軸:デカルト座標系の定義に従い、基準面X軸から90度の方向

上記定義の通りですが、ECEF系は地球の自転と同期して常時回転しています。そのため、地球上のある領域を関心領域とし、周回衛星が当該の関心領域に対してどのような運動をするのか表現することに長けています。ただし、ケプラー軌道要素は慣性系に対する特性値を与えますので、ECEF系その他時々刻々変動するような座標系では意味を成しません。

ECI系とECEF系の定義を動画で確認しましょう。

では、まったく同じ軌道を異なる座標系で表現するとどうなるか動画を見てみましょう。下の動画ではある衛星軌道をECI系とECEF系で表示しています。軌道の色は座標系の色と同一です。衛星の位置は空間上で全く同じ位置を示していますが、表現する座標系で表示される軌道が異なる様子が分かりますね。

その他(天体固定回転座標系)

2の回転座標系の1種に天体固定の回転座標系も存在します。代表例は太陽地球固定回転座標系(SE系)や地球月固定回転座標系(EM系)があげられます。SE系の一般的な定義は次の通りです。

・基準面:平均公道面
・X軸:太陽中心から地球中心方向
・Z軸:基準面法線方向(北向き)
・Y軸:デカルト座標系の定義に従い、基準面X軸から90度の方向

このような、回転系は宇宙機と特定の天体の関係性を把握するときに役に立ちます。
例えば、地球周回衛星をSE系で表現すると、軌道上でどちらの方向に太陽があるのかを明らかに示すことができます。

以上で、前回に引き続き上下左右の概念のない宇宙空間で、いかにして衛星がいる場所、過去・現在・将来にいる場所を知るために必要な軌道要素・基準座標系・元期についての理解を深めることができました。
次回は代表的な軌道要素「平均軌道要素」と「接触軌道要素」について、そして実際に衛星を使ったミッションと取るべき軌道の形状(タイプ)について解説します。

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